馬車郎の私邸

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友達夫婦のススメ

博報堂生活総合研究所は1988年から10年毎に、サラリーマン世帯の夫婦を対象にアンケート調査「家族調査」を続けてきた。調査によれば、理想も現実も「友達夫婦」が最多、「亭主関白」は絶滅危惧種になったとのことだ。

理想の夫婦像について、夫・妻とも最多の回答は「友達夫婦」(夫64.9%・妻79.5%)。30年前は各々39.3%、75.2%)だった。また、現実の夫婦像でも「友達夫婦」が最多となった(夫53.8%・妻57.3%)。 30年前は35.1%、42.5%だった。さらに、「亭主関白」は理想でも現実でも、30年間で最低となった(夫の理想:1988年50.2%→2018年17.8%など)。「カカア天下」はもはや死語だ。

また、家庭で総合的な決定権を持っている人について、「夫」との回答は過去最低になった(1988年72.4%→2018年38.7%)。一方、「妻」との回答は過去最高となり(1988年10.1%→2018年30.3%)、両者のスコアは30年間で最も接近した。これを夫の地位低下、妻の地位上昇と単に認識するのは、あんまり生産的な解釈ではないだろう。対等に近づいただけだ。

さらに、2015年 社会保障・人口問題基本調査(結婚と出産に関する全国調査)P14によると未婚者の結婚相手との年齢差についての希望をみると、近年、男女とも年齢の近い相手を希望する割合が増加傾向にある。特に、男性では「同い年志向」が増加しており、1987年の8.7%から2015年は41.8%に大きく高まっている。

要するに、友達のような対等な関係の夫婦を志向する人の割合が高まっている。このことは結婚を決めるにあたり、ポジティブな方向に作用すると推察する。その理由は、友達は長い付き合いがあるので、結婚においても安定的な関係が見込めるためだ。恋で浮かれた目で、言い換えると贔屓目で相手を見ていないため冷静に判断できる。それに、実際のところ、友達というのは気楽で良い。

以前書いたように自分も現実を見据えて、理性的に考えた結果、友達と夫婦になることを志向し、実現させた。現状のところ、この決断はうまくいっていると評価して良さそうだ。劇的なロマンスやら胸のときめきはそこにはないが、関係は堅実で良好かつ安定的だ。

100年前に書かれたモームの短編「便宜的な結婚」に出てくる言葉ほど、冷めた見方をする必要はないと考えるが、それでもかなり結婚の要諦について示唆は十分にあろう。
「実際の話、便宜上の結婚では、双方とも期待が少ないものですから、失望も少ないのです。お互いに対して無意味な要求をすることもありませんので、腹を立てる理由はありませんでしょう。完璧を求めませんから、お互いの欠点に対して寛容になれますわ。情熱に燃えるのも結構ですが、情熱は結婚の基盤として適切ではありません。いいですか、結婚して幸福になるには、お互いに尊敬しなくてはなりませんし、身分が似通っていて趣味も同じがいいですね。そうして、二人がまともな人間で、進んでギヴ・アンド・テイクをし、相手も生かし自分も生かす気があれば、そういう結婚なら私どもの結婚と同じように幸福なものとなりますわ。」
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