馬車郎の私邸

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名曲紹介4:美しい曲は毒にも薬にもなる―光永亮太 「ALWAYS」(ドラマ「いつもふたりで」主題歌)

中高生のとき、好きだった歌番組は「ミュージックステーション」よりもむしろ「速報!歌の大辞テン!!」だった。その理由はよりたくさんの歌を聞けるためだ。毎週欠かさずビデオににとってカセットやMDに自分のアルバムを作っていたものだった。徳光和夫の司会のもと、今週のヒットチャートランキング20曲と、過去の任意の年のヒットチャートランキング20曲を聞けるのだから実に楽しい。おかげで昔の歌を知ることもできて、興味が広がるばかりでなく、上の年代とも話を合わせるのに大いに役立ったものだ。

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高校生の時好きだった歌をまずは紹介しておこう。それは、光永亮太の1枚目のシングル「ALWAYS」だ(2003年2月19日リリース、オリコン最高5位)。松たか子と坂口憲二主演の月9ドラマ「いつもふたりで」主題歌である。

シンガーソングライター光永亮太のファルセットボイスが、技巧に富んでいて実に聴き応えがある。曲もメロディアスで堅実、安定感がある。キラキラする音が散りばめられているのもなんだか楽しい。

だが、特筆すべきはドラマの内容にも沿ったその歌詞だろう。「若い頃とか幼い頃は、何でも叶うって信じてたし。どんなことでもできると思えばできる!って思い続けていたい自分と、どんなに頑張っても手に入らないものもあると知ってしまったっていう自分の両方が自分の中に存在していて、いまだに。その辺が良く表現されている歌だなあって思いましたねぇ」と、二律背反性を絶妙に表現している点を脚本家の相沢友子氏は高く評価している

高校生の時分に良い歌詞だなと思っていたが、歌詞が胸に染み入るのは、20を過ぎてからだった。「どれだけ精一杯手を伸ばしても 届かないものもあると教えられたけど」「願えば誰でもひとつは叶うよ 無理に答えを出しては 灯した火を消さないように」。サビの歌詞がなんともぐさりと心に刺さる。悪い方にも良い方にも、だ。2番の歌詞も胸に来る。

少女漫画とゲーテのような文学作品に傾倒していた私は、初恋に対する過剰なコミットメントが常に心を苛んでいた。同じ相手に1度目は「やはり君は可愛い後輩」と振られ(これは致し方ない、力不足だった)、2度目は無念にも自然消滅(後で聞いたところによると相手の辛い時に力になれなかった、これこそ辛い!)、3度目は…やや曖昧な状態で互いに関係の修復を模索していたが、前述のようにかつてその人が推薦した私の友人との確度の高い現実的に先を見通せる関係を前に進める方向に舵を切ることにした。

そのことを報告した時、祝福しながらも笑顔で言った言葉が忘れられない。「もう。私、婚期逃しちゃったじゃないの」。それが、文字通りの意味で困っているために言った言葉だったのか。あるいは良い奴を逃してしまったと示唆することで褒めてくれたリップサービスだったのか。それとも願いを捨ててしまい、現実的な方面に向かった私に思うところあって非難と糾弾をこめて言ったのか。他の意味があるのか。一つでなく複数の意味があるのか。

「無理に答えを出しては」いけなかったのだろうか。「灯した火を消さないように」していればよかったのだろうか。「願えば誰でもひとつは叶う」のだったのだろうか。こんなにも美しくて綺麗な歌を聞くたびに、私の手にした今の幸せに影が差して胸が痛むようになるとは思いもよらなかった。

歌は良くも悪くも心を揺さぶる。美しい曲は毒にも薬にもなるのだ。

あなたの音楽体験を豊かにする一品!

「いつもふたりで」OP

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