馬車郎の私邸

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近藤信輔 「烈!!! 伊達先パイ」第1巻、集英社

あらすじ:高校1年生の片倉君は彼女との夢の交際ライフをゲット…と思いきや、妹を溺愛する彼女の兄上が鎧を身にまとい刀をブン回し、2人の邪魔だて!! 恋の学園独眼竜ギャグが、浮かれた青春に戦国の狼煙を上げる!!

読み切りと初回掲載時の感想は、以前、「今週のジャンプの読み切りについて」(「烈!!! 伊達先パイ」掲載号)今週(2012.41)と最近のジャンプ感想 【新連載「烈!!! 伊達先パイ」】の2つの記事に書いたとおりです。

我らがWSMKの近藤先パイが、ジャンプ連載そしてこの度の単行本刊行と、新年からめでたい限り。あけましておめでとうございます。今年も当ブログをよろしくお願いします。ジャンプは少女(のための)漫画と言ってはばからない少女漫画研究会からのジャンプ作家輩出は記念すべき出来事。少女漫画要素は、ギャグ漫画としてのストーリーの構成に、ふと岡田あーみんの『お父さんは心配症』が通奏低音になっているように思えるくらいでしょうか。

さて、初めての人向けに紹介すると、この漫画は特長は一言で言えば、ノリと勢いの不条理ギャグ。『ボボボーボ・ボーボボ』『突撃!パッパラ隊』が好きな私にはちょうどいい。万人受けはしないかもしれないが雑誌の一角にこういう漫画が一つあると、頭を使わず読めて楽しい、そんな感じ。随所にパロディが多いが、そのネタは大半の10代にはわからないだろうと思うけれども、早稲田祭で近藤先生にお会いした時、アンケートでは10代にむしろ人気があると伺ったのでむしろこれでいいのかも。ボーボボばりの、"わけがわからにけど笑っちゃう"ギャグ漫画として定着してほしい。以下、順にさっくり感想を書いていきます。

3話:影武者が切られたと見せかけて結局自分が切られたりとか、キザでドジな真田先パイ初登場の回。いいキャラしとる。大学1年生の私がキャラとストーリーの諸問題について当時4年生の近藤先パイと論じ合ったのはいい思い出。たしか当時特に増え始めた(そして今では定着した)ラノベ原作メディアミックス1クールアニメの粗製乱造ぶりを憂いてのことだったように思う。

記憶をたどるために、上記のリンクの記事を見ると、7年前近藤先パイは「キャラがストーリーを創るのだ」という作業仮説をお持ちだった。真田先パイというキャラは、この作品の中で無理なく主人公勢に絡むことができるので、話に組み入れやすく動かしやすい、いいキャラなのだなと通読してみて感じた。特に最新号では、真田十勇士と併せ、伊達先パイが全く出てこなくても面白かったくらいだったのだから……

ずんだ四天王のようなビジュアルだけでインパクトのありそうなキャラは、サークルの会誌時代からの作者の持ち味だ。ケツアゴ+メガネ+七三分けの佐原が特にツボ。そういえば1巻のチラシは伏線だったのか…?

4話:怪盗縦笛紳士石川、襲来回。4ページ目の左下2つのコマの愛ちゃんが妙に可愛い。というかこの回のデフォルメは全部可愛い。さりげなく愛染様の名言「いつから○○だと錯覚していた…?」が縦笛に使われる日が来るとは…

5話:前田K.J.初登場回。前田慶次のようなワイルドな風貌と裏腹に、爽やかに妹に萌える漢というギャップが実にしっくり来ないようでしっくり来る。2号続きの変態襲来に、

6話:真田の配下で、伊達先パイの秘密を探るくの一、霧子初登場回。最後の大ゴマが実にシュール。

7話:ハンバーガーショップでバイト回。コーラとチーズバーガーを頼もうとしている人は作者本人に似ているのは気のせいだろうか。バイト先に身内や知り合いが来たらやだよね。

8話:心配性で思い込みが激しく過保護なメイド喜多さん登場。いちいちその激しすぎる思い込みの飛躍具合が面白い。ちなみにコミックスの表紙をはがすとそこでもちゃっかり、読者に対して思い込みを披露してくれます。そういえば、喜多さんの「性格面にもモデルがいて、この非常にぶっ飛んだ想像力はフィクションどころかリアルです。マジで。というかリアルはもう少しすごいです。」と作者コメントにありますが、もしかして……?

喜多さんの多数の想像力思い込みバリエーションの一つに、「二次元嫁と結婚したいあまり法改正を求めて国会を占拠するテロリストになったら」がありますが、そのネタを本当にやった漫画がありました。『突撃!パッパラ隊』ですKONAMIにバレたら激怒は必至の回で、巻頭カラーで特にインパクトの強い回でした。たしか11巻くらいだったと思います。

ちなみに、フォーマルな全身タイツが、一番可笑しかったです。

9話:風を引いた伊達先パイ看病回。寝言の前半部とZUNDA FRIENDのDUNNYの不意打ちが面白かった(小並感)あれこれやるけど、どうにもならず自体がよりひどくなってカオスな展開は、ギャグ漫画の作り方の鉄板。

読み切り「ジャンプNEXT」掲載版:
パワーポイントの作り方は、よく1スライド1メッセージなんて言うけど、1ページ1ギャグという感じで、とにかくテンポがいいので、ノリと勢いだけで楽しい。本編も、ネタの詰め込みと複雑さを避けるとより読みやすくなるかもしれない。

17話まで来たので、20週の壁は乗り越えたのかな…?「タカマガハラ」の清々しいまでのテンプレ打ち切り最終回を見ただけに少し不安なところ。同じギャグ枠では、「銀魂」「SKET DANCE」の2強だけではなく、「斉木楠雄のΨ難」、「暗殺教室」も極めて手強い強豪相手だろう(2作品とも面白い!)。となると、同時期開始の「クロス・マネジ」、3号連続新連載の「HUNGRY JOKER」、「食戟のソーマ」「新米婦警キルコさん」と連載の枠を直接に争うわけだが、これら4作品よりは相対的に面白いと主観的には思っているので、30週まではいくのではないか。

もし仮にテコ入れするなら、典型的にはバトル展開が考えられるだろう。「魁!!男塾」みたいなタイトルなんだし、伊達先パイのような全国の武将マニアが集結してトーナメント!勝ち抜き戦!とか、あるいはなんかすごそうな敵の一味が現れて何らかのパワーに目覚めるとか(適当)。このあたりは、連載が1年経過していつの間にか丸い線の絵柄が劇画調に変わり、ギャグ漫画からバトル漫画へ転身した「家庭教師ヒットマンREBORN!」が参考になろう。とはいえ、伊達先パイは、作品自体の構図というかフォーマットがしっかり決まってるので、1回ごとのギャグの質向上でしっかりインパクトを残してアンケート記入の時に思い出してもらうのが、目先の現実的な打ち手なのだろう。

今後も、片倉くんと愛(めご)ちゃんの恋路を妨害する伊達先パイの大暴れぶりと、多種多様な変態たちの、そしてそれに彩りを添える多数のケツ割れあごマッチョキャラたちの活躍に、期待したい。