馬車郎の私邸

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首にまつわる3つのトラウマについて

中学生くらいの時、社会の授業で二条河原の落書を習ったことを覚えている人は多いだろう。建武の新政当時の混乱する政治・社会を七五調で批判、風刺した名文である。有名な冒頭部分を引用してみよう。

此頃都ニハヤル物 夜討 強盗 謀(にせ)綸旨
召人 早馬 虚騒動(そらさわぎ)
生頸 還俗 自由(まま)出家
俄大名 迷者
安堵 恩賞 虚軍(そらいくさ)
本領ハナルヽ訴訟人 文書入タル細葛(ほそつづら)
追従(ついしょう) 讒人(ざんにん) 禅律僧 下克上スル成出者(なりづもの)

といった具合で、当時の混乱ぶりをリズミカルに描写した文章だ。おいおい、生頸(生首)が流行ってるのかよ!そりゃやばいな…とツッコミを入れたくなる。

その生首であるが、最近のアニメでは、魔法少女まどか☆マギカ 第3話「もう何も恐くない」は記憶に新しい。下の参考記事を見ればわかるが、作中人物にも視聴者にも愛されたキャラクターが、首を喰いちぎられるという残酷な死に様は多大な反響を巻き起こした。

参考記事:
『魔法少女まどか☆マギか』第3話・・・これが虚淵玄氏の本気だあああああああああ
『魔法少女まどか☆マギカ』がネットで話題!

脚本の虚淵玄さんがTwitterで言うには、「溢れるマミ愛が、あんな脚本書いちまった当人としては胸に痛いっす……」ということだ。
あれが、溢れるマミ愛の結果だと!正気の沙汰ではない。だが狂気の沙汰こそ面白い。

さて、上記の事例の他には、首に関しては私には3つのトラウマがある。それぞれ列挙すると、
1つ目:3歳の時のトラウマ:「地球戦隊ファイブマン」第44話「死闘ロボ戦」
2つ目:6歳の時のトラウマ:機動戦士Vガンダム第36話 「母よ大地にかえれ」
3つ目:20歳の時のトラウマ(?)「School Days」 第12話「スクールデイズ」

1つ目の地球戦隊ファイブマン第44話「死闘ロボ戦」では、何があったか。簡単に言うと、スーパーファイブロボの首(と腕)が取れたのだ。一時はトイレ掃除係にまで落ちぶれた銀河戦艦バルガイヤーの初代艦長ガロアが、艦長返り咲きを目指し最終兵器を繰り出した。これを迎え撃つファイブマンであったが、スーパーファイブロボがあっさり倒されたという顛末。

腕と首が落ち、ゆっくりと後ろへ倒れていくスーパーファイブロボの姿は、今見てもギョッとするものがある。ましてや、当時の自分は3歳。これには本当にビビった。やはり、巨大ロボは男の夢(?)であり、子どもにとっては強さの象徴である。戦隊もので唯一買ってもらった玩具は、スーパーファイブロボだったことも、ショックの強さを増しただろう。3号ロボが出るのは次のジェットマンからだから、ファイブロボとスターファイブが合体したスーパーファイブロボを失うのは、展開上も絶望的かつ致命的な事態なのだ。

2つ目の「機動戦士Vガンダム」第36話 「母よ大地にかえれ」 も、今なお語り継がれる、日本アニメ史上に残るトラウマシーンだ。これを5時台のアニメでやったというのだからすごい。富野監督もこのときは本当に病んでいる。

その内容とは、主人公のウッソ・エヴィンの目の前で、人質に取られた母のミューラ・ミゲルの首が吹っ飛んでいくという凄絶な情景だ。阪口大助さんは実はこの作品がデビュー作。この時の阪口大助さんの叫び声は耳に残っている。阪口大助さんの声を聞くたびに私はウッソの声を思い出してしまう。そう、例えば「銀魂」を見ている時でもf^^;

首が飛んでいくシーンもさることながら、続くシーンもきつい。遺品を回収した主人公が、(首の入っているであろう)血が滴るヘルメットを持ちながら「これ、母さんです」とつぶやく。このシーンについては、言葉が出ない…

では、なぜこんな怖い作品を6歳の自分は見ていたのか。小学生の時、金曜日はいつもアニメが楽しい日だった。当時、金曜といえば5時から7時にかけて、機動戦士Vガンダム→五星戦隊ダイレンジャー→姫ちゃんのリボン→剣勇伝説YAIBAと見るのが、定番だった。この6歳の時のトラウマは大きかったが、それでもVガンダムは毎週見ていた。他の3つの番組が明るいからいくぶん中和されたのもある。

だが、それ以上に怖いもの見たさという心理があったのだろう。毎週敵味方が死んでいき、主人公も優秀だがそれでもほぼ毎週のように殺されかけていた。緊張感があった。最近のガンダムにないものはこの点だろう。また、敵メカは幼心にも滅茶苦茶なものに見えた。(exバイク戦艦、タイヤetc.)しかし、そのようなものに命を脅かされる、命を奪われていく、蹂躙される。その不条理さと理不尽さの暴力に恐怖を覚えた。

3つ目の「School Days」第12話「スクールデイズ」については、少し前置きしておこう。この作品はニコニコ動画を中心に人気を博した。といっても、どのような人気かというと、主人公伊藤誠があまりにも最低なために、「誠死ね」が流行語となっていたという具合だ。

当時のニコニコ動画は、アニメの本編がまるごと上がっているおおらかな時代だった。ご多分にもれず、「School Days」もそうだった。常に再生数よりもコメントが上回っているのが、「School Days」の特徴で、伊藤誠の外道ぶりに対して、「誠死ね」とコメントするのが常だった。

では「誠死ね」に対して、制作陣はどのように答えたか。まさしく、期待に答えたのである。ただし、視聴者の予想をはるかに超えるようなトンデモ展開で。

手短に言うならこうだ。まず、鬼気迫る西園寺世界が伊藤誠をメッタ刺しにし、その後桂言葉が西園寺世界の首をノコギリで一閃。腹を掻っ捌いて妊娠を確認しようとする。その時の「中に誰もいませんよ」というセリフは、ネット上で一躍有名となった。そして、桂言葉は愛する伊藤誠の首を胸に抱きながら、ボートで旅立つのである。「Nice boat.」

首ということでは、オスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』を彷彿とさせる…「誠死ね」とコメントをしていたニコニコユーザーを圧倒する殺し方をやってみせた制作陣には、作品にかける狂気じみた情熱を感じるどころか、ただ畏怖するのみである。

以上のように首についての話をしてきたが、それぞれ動画を貼っておこう。子供の頃に見た作品をもう一度見ると、いろいろな発見がある。あえて見てみるのも、一興だろう。

地球戦隊ファイブマン第44話「死闘ロボ戦」



機動戦士Vガンダム第36話 「母よ大地にかえれ」


魔法少女まどか☆マギカ 第3話「もう何も恐くない」


School Days第12話「スクールデイズ」